サザエさん炎上から考える、頭の中がつねに検閲状態な問題

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先日、2020年4月26日(日)にデイリースポーツonlineで配信された「サザエさんがまさかの炎上」という見出しの記事が、Yahoo!ニュースやライブドアニュースなどのニュースサイトにも掲載され話題になりました。

サザエさん炎上記事そのものが炎上マーケティング?

デイリースポーツ online
2020/04/26

こういった記事は、意図的に「炎上」という見出しを使って閲覧者を増やそうとする、いわゆる炎上マーケティング的な側面があることも容易に想像できます。

炎上マーケティングとは

ウェブサイト上での、不適切と思われる発言や表現をもとに生じる「炎上」を、広告宣伝に利用する手法。(コトバンク

実際、Twitterで「サザエさん 不謹慎」といったワードで検索してみると、実際にサザエさんを批判している人はごく少数(数名とか数十名とかそんなレベル)ということもわかりますし、この記事自体を批判している人も多数見つけることができます。

良い悪いという話はいったん置いといて、「サザエさんが炎上してるという記事を書く」→「その記事を見た人が、不適切だ!という声をあげる」→「記事がキッカケでさらに炎上する」→「結果、その記事のアクセスが伸びる」という流れはできあがっていましたね。

まぁ、よくよく調べてみれば、今回のサザエさんの放送を不謹慎だと思っている人は、ごくごくごく少数で、まんまと炎上マーケティングに乗せられちゃったかなと思うわけです。

頭の中がつねに検閲状態

今回の件、こういったつぶやきをされてる方もいらっしゃるのですが、実際、そうなってしまうケースもあるようです。

そのことを「クーリエジャポン」は、「【新型コロナ】外出自粛で家にいるのに読書に集中できないのはなぜ?」という記事で、「頭の中がつねに検閲状態」と表現していました。

(Yahoo!ニュースにより配信されたクーリエジャポンの記事

私たちが生きている切迫した現実によって、神聖な逃避の瞬間までもが支配されている。これが、多くの人に起こっていることだ。

私たちの心の中のコロナウイルスは、私たちの感覚や脳にとても強い影響を及ぼしている。だから私たちは、そのことを考えないで本を読んだり映画を観たりすることがもはやできなくなっている。

フィクションとわかり切っているテレビCMも、あらためてその偽善が明らかにされる。たとえば、有名なオレンジの食前酒のCMは、ハグや友人たちと過ごす楽しい時間を約束する。だが、私たちにはそれらを楽しむことができない。すると俳優たちが軽率で、少し場違いに見えてくる。

(Yahoo!ニュースにより配信されたクーリエジャポンの記事より引用)

今回のサザエさんの件、「コロナウィルスのことが頭から離れず、作品自体を楽しめなくなっている」と考えることもできるのではないでしょうか。

たしかに、今、私たちは、今回のサザエさんの放送にあったようなゴールデンウィークを楽しむことはできません。

「ゴールデンウィークを楽しむことができない」ということに注意が向いているから、不謹慎だという発想にもなり、嫌な気分にもなるわけです。

今回の問題の本質は、注意の向け方にあるような気がしてなりません。

それについて、以前読んだ「ファスト&スロー」にも、印象的な記述がありました。

注意の向け方を変えれば、今の状況でも楽しむことはできるはず

「ファスト&スロー(下)」
ダニエル カーネマン(著)

私たちは通常、そのときやっていることや目の前の状況に注意を集中する。だが、もちろん例外はある。主観的な経験の質が、その瞬間の行動ではなく、反復的な感情や思考で決定づけられるようなときがそうだ。恋に落ちてしあわせいっぱいだったら、渋滞に巻き込まれても楽しくてたまらないだろう。逆に悲嘆に暮れているときは、いくら愉快な映画を観ていても気分は落ち込んだままだ。だが通常の状態であれば、私たちはそのときの出来事に注意を向けていれば、そこから快楽や苦痛を感じる。

「ファスト&スロー(下)/ダニエル カーネマン(著)」より引用

僕らは今、先が見えない状況に陥ってはいます。

いったいいつになったら、今までの生活を取り戻せるのだろうか?

日本国民、みんな、そう思っています。

だから、本来、楽しい娯楽のはずのサザエさんに対してさえ、不謹慎だという声があがるのでしょう。

まさに、ダニエルカーネマンが言うところの「悲嘆に暮れているときは、いくら愉快な映画を観ていても気分は落ち込んだまま」という状況だと思います。

しかし、こんな状況であっても、注意の向け方を変えることができれば、じゅうぶん楽しめるのではないでしょうか。

「緊急事態宣言で自宅にいる時間が増えたおかげで、家族との時間も増えた。こんなことを言うと不謹慎かもしれないけど、今が一番幸せだ。」

こんな発言をSNSでしていた人も見たことがありますが、注意の向け方が変わると、このような捉え方もできるわけです。

今日という日は2度と帰ってきません。

注意の向け方を変えて、今を楽しむ、今できることを全力でする。

難しいことではありますが、それを心がけて生きていきたいですね。

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